3/02/2010

【書評】資本主義と自由ーーーミルトン・フリードマン

読み終えて驚くことが、この本が約50年前に書かれたということだ。

50年前は自分の親が子どもだった時期だが、そのときからフリードマンは「通説を疑うこと」の大切さを教えてくれている。

本書はタイトルの通り、資本主義と自由について書かれている。自由がいかに大切か、市場や競争を通じていかに人びとに恩恵が行き渡るかを生き生きと書いてある。

しかし、この本が50年前に書かれたことを考慮すると、資本主義や自由だけでなく、(フリードマンが意図したかどうかは分からないが)もうひとつの大切なメッセージが浮き上がってくるように思える。

それは「通説を疑うこと」である。

1990年前後に冷戦が集結し、ソ連の崩壊・東西ドイツの統合があり、世界最大の人口を有する中国も開放政策により市場経済を取り入れるようになった。
しかし、共産主義や全体主義を声高に主張する人は数少なくとも、誰もが資本主義を称賛しているわけでない。

さらに、金融危機が起こって、「市場原理主義」という言葉が独り歩きして批判されている。そして、市場の失敗を正すために大規模な政府の介入が容認される。

だが、池尾和人さんも言うように「問題なのは市場経済であることではなく、その質が低いことにある」のだ。
この本を読むと、「政府の介入容認」というそれらしい通説がいかに非効率かがよく分かる。