11/30/2009

【書評】ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る



本書は2006年に執筆されているので、「景気回復期にワーキングプアという社会問題にスポットを当てた本」として読むべきである。
最近は、城繁幸氏や湯浅誠氏の本も読んできたが門倉貴史氏を含めた3人はそれぞれ焦点が異なっている。城氏:正社員、門倉氏:フリーター・ワーキングプア、湯浅氏:生活保護・ホームレスといったところだろうか(もちろん、明確に分けられている訳ではない)。

門倉氏はエコノミストの立場から、多くの統計データを用いて問題を考察する。また、統計データだけでは実態が分かりにくいのでドキュメントとして10人の方々のインタビューも載せている。
著者もあとがきで記すように、このドキュメントの受け取り方は人それぞれだ。自分としては、必ずしも全員が現代の構造的な問題からワーキングプアになってしまったというような印象は受けなかった。おそらく、戦後の日本において低所得者層はずっと存在したであろう。

著者は最後の章で「企業が副業を認めること」や「支出税」などを提言している。いずれも初版から3年経った今でも実現には遠い(副業はリーマン・ショック以降認める企業も多少出てきてはいるが)。

また、「人手不足が発生すれば自然と若者の雇用環境が改善する」というロジックは短絡的だと指摘している。それは企業が求める能力と学生の能力の間にミスマッチが生じているためだという。
この問題の一つの解決方法は「大学の専門機関化」だろう。医学部や児童学部のように、ある程度将来のコースが決まった学部や学科を設けて専門的に教育するようにすればある程度ミスマッチの程度は縮まるかもしれない。(大学の専門機関化には弊害も多々ある)

11/29/2009

【日常】大学の教室の張り紙

今日、家の近く大学にTOEICを受けにいったのだが、受験した教室にあった注意書きの張り紙に驚いた。

教室内で飲食をした場合は、ゴミを捨てるか持ち帰ること。
ゴミを捨てる場合は所定のゴミ箱に分別して捨てること。
また、机への落書きをしないこと。
                           学生課

この内容は大学生に注意を喚起しなければならないことなのだろうか?中学校の教室に張ってあるのならまだ分かるが、18歳以上の大学生に対してゴミや落書きに関する指導は非常に違和感を感じる。

もっと言うなら、自分で出したゴミを捨てない学生や、机に落書きをするような学生がいるのなら(いるorいたからこのような注意書きがあるのだろうが)、それは注意書きを張ってその迷惑行為がなくなればOKということにはならないのではないか。

そもそも大学側に生徒のマナーに関してどこまで責任があるのかは別の話になるが、どんなに専門的で高度な学問よりも(社会)人として基本的なことを身につけるべきだと思う。

11/28/2009

【経済】デフレは原因ではなく結果

先週末の為替市場は円独歩高となった。
米国の低金利政策の長期化観測と、ドバイ・ショックによる欧州経済への信用不安で円が逃避先になったのだ。

そこでニュースなどでは「デフレが加速する懸念がある」となる。当然、円建ての輸入価格が下がれば輸入品の価格は下がるし、それが他の製品の価格も引き下げるというのは理解できる。
また、デフレスパイラルという言葉はおそらく中学生の頃から何度も何度も耳にしてきたが、この説明が「インフレを起こせばいい」という誤解を生むのではないだろうか。

「物価が下がる」→「企業の売上が減る」→「企業の従業員の給料が減る」→「消費が低迷する」→「物価が下がる」→・・・(繰り返し)

ロジックはいいのだが、「物価が下がる」という前提があるから「インフレを起こせ」となるのだ。物価が下がる結果になった構造的な原因(日本経済の非効率性)を解決しなければ、問題を悪化させるだけだ。

11/27/2009

【IT】若年層の最強メディアはmixi(かもしれない)

mixi、アプリが奏功、総利用時間でYouTube抜き、Yahoo!に次ぐ2位に

09年10月の国内サイト利用時間でmixiがYahoo!JAPANに次ぐ2位になった。

このランキングは「職場と家庭からのアクセス」の人数と時間なので、おそらくケータイは含まれていない。

Yahoo!がトップなのは、単純にIEを立ち上げたときのページが初期設定のままか見慣れているからYahoo!に設定しているだけなのだと思うが、そもそも「まだIE?」「まだYahoo!?」と思ってしまう。
他の人が自分のPCの設定をどうしてようとその人の勝手だが、ブラウザをFirefoxにせずメールをGmailにしないのは、ただ「知らないから」では終わらない問題のような気がする。
それは、利用者にとって「インターネットを便利に使いたい」というインセンティブがないのか、それともインターネットの側に魅力が足りないのか。インターネットの魅力の感じ方は人それぞれだが、少なくとも自分は「ウェブ進化論」や「次世代ウェブ」を読んでワクワクしたのだけどなぁ。
あと、microsoftのサイトにもアクセスが多いのは「Windows7」が10月に発売されたからかな。

mixiの方に戻ろう。ココでのmixiの伸びは利用者数ではなく総利用時間数だ。

つまり、mixiアプリによって一人当たりの利用時間が増えたのだ。mixiは最近「voice」やアプリによってtwitterやAppleのiPhone・iPod touchのゲームに対抗する動きを見せている。
最初は「マネで後追い」だと思っていたが、これまで順調に伸びているのはmixiが日本最大のSNSだったからに他ならない。twitterやアプリにはマイミクの存在という「ネットワーク外部性」がある。電話のように(マイミクの中で)使う人が増えれば増えるほど効用が増すのだ。

おそらく、mixiには若年層の多くがケータイでアクセスしている。当然、ニュースなどもmixiで目にすることになる。エンタメ情報などはテレビのワイドショーと重複する面も多く、「テレビをほとんど見なくてもmixiニュースで間に合う」とも言える。
個人的にはテレビはもはやほとんど観ていないので、周りの人達がどんなメディアと接しているのか肌感覚では分からないのだが、若年層のかなりの人々がmixiで情報を得ているのではないかと思う。

11/26/2009

【書評】なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学



池尾和人氏と池田信夫氏の対談形式で、金融危機と不況について冷静で中立的な議論(ほとんど池尾氏の解説)が進められている。
冷静で中立的というところが肝心で、今回の金融危機をテーマにした本は色々と出版されているが、感情的で勧善懲悪のトーンで話が進むパターンが非常に多いと思う。

ウォール街のインベンストメントバンカー達の罪状をただ読み上げるだけなのは、それはそれで必要かもしれないが自分は読みたいとは思わない。(そもそも、読みたい人が読むのが本というものだが)

この本は結論として、
競争力の強い輸出産業と、競争力の弱い国内の非製造業の生産性の格差が拡大していることが日本経済の最大の問題
としている。その解決のために、
解雇規制の緩和・資本市場の充実が必要
と説く。もちろん、これをした後にくるのはさらなる競争社会だ。

11/25/2009

【書評】過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか?



「半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる」というインテル創業者のゴードン・ムーアが1965年に提唱したこの法則、これは現代も続いている。それによるコモディティ化・水平分業化は、IT業界をはじめ様々な企業にとっても避けられないテーマだ。

本書の主題は「ムーアの法則」だが、一番気になったのが「IT業界のマーフィの法則」だ。この法則は失敗するプロジェクトの法則をこう表す。

1:最先端の技術を使い、これまで不可能だった新しい機能を実現する
2:数百の企業の参加するコンソーシアムによって標準化が進められる
3:政府が「研究会」や「推進評議会」をつくり、補助金を出す
4:メディアが派手に取り上げ、「20XX年には市場規模が**兆円になる」などと予測する

これは日本の政府だけでなく、企業内にも内包する問題かもしれない。最初に「役に立たない」とか「不可能だ」と言われたものが、後々に大成功する話はよくあるが、逆に最初の方で「これこそ次世代の技術だ」と騒がれると成功しないのだ。

この法則を眺めていると、この法則があるからこそ世界は面白いと捉えることが出来る。結果論だが、これまでの様々なイノベーションがこれに当てはまらないからこそ、それは後々にイノベーションと呼ばれるのだ。

【書評】成功は一日で捨て去れ



読みたい・買いたいと思って、書店に探しにいってもない本も多いが、この本はどんな書店にも平積みされているくらい売れている。逆に、この書評を書いている11月25日現在で、Amazonでは在庫切れになっているくらいだ。

この本を読んでいて感じたことは、柳井氏が今悩んでいることだ。

ユニクロをはじめとするファーストリテイリンググループはこれまで、柳井氏の強烈なリーダーシップで成長してきた。
そして(本人も指摘していたが)これからの更なる成長のためには「後継者」が欠かせない。その周囲の心配を払拭するためか、各章の終わりに付された毎年の新年の挨拶には「社員全員」という言葉が連発する。そして、最後の章は「次世代の経営者へ」と後継者育成への決意を語っている。

また本書のタイトルでもある「成功は一日で捨て去れ」は、もちろんこの本を読む人に対して向けられたメッセージであるが、実は柳井氏が自分自身に対しての戒めという意味も込められているのではないだろうか。

本書の中で一番面白かったのが、柳井氏が「衣料品小売業界の中にはチャンスはないと思っている」と書いていたことだ。
そして、「例えば携帯電話を敵と捉えれば、それよりももっと魅力があって買いたくなるような洋服とはどんな商品なのかを考える」ということだ。敵は同業界内ではなく、他の業界(そもそも業界という括りをする時点でダメなのかもしれないが)と考えることがこれからは全ての企業で求められるのだ。

11/24/2009

【IT】ウェブサービスの「キャズム」

iPhoneのアプリをはじめとして、自分としてはウェブ上のサービスを一般的な人よりは使っていると思っていたが、最近その「使う人」と「あまり使わない人」の間にキャズムが存在するように感じてきた。

バイトの後輩と話していたら、twitterは知っているがRSSは知らなかった。また大学の友達もGmailやGoogleカレンダーは知っていてもGoogleドキュメントを知らなかった。
ココにキャズムがある。twitter・mixi・ブログ・youtubeはキャズムを越えたが、RSS・Googleドキュメント・Dropboxは越えていない。

このキャズムを分かつものは、iPhoneなどのスマートフォンなのかもしれない。最近、IBMのCMでもクラウドコンピューティングというフレーズが登場しているが、スマートフォン=クラウドを実現する端末と言っても過言ではない。

反対に、今日本で普及しているケータイのほとんどはクラウドには不向きだ。もちろん、mixiモバイルやtwitterのようにウェブサービスの方からケータイに対応してくる可能性もある(ココがクラウドの素晴らしいところだと思う)。しかし、自分から様々なウェブサービスを活用したいと思うようなキャズムの前に入るアーリー・アダプター達は、対応するのを待つ前にスマートフォンを手に入れるだろう。

今後、様々なクラウド・コンピューティングサービスが登場することが期待できるがその普及を阻むのは日本のケータイなのかもしれない。

【経営】日航の年金問題

OBの企業年金は強制減額すべきではないーーー山崎元

今朝のニュース番組で昨日行われた、日本航空の企業年金減額に関する労組・OB向けの説明会の様子を放送していた。
報道陣は会場内に入れなかったようなので、OBへのインタビューが中心だったが、「納得できない」という人から、「仕方がない」という人までいた。

自分としては、すんなりとは強制減額するべきではないと考えている。
日航の企業年金が増えても減っても、自分のサイフには直接の影響は何もない。しかし一番懸念されるのは、これから経営不振に陥った企業やその債権者が「日航の例に倣って、まず年金減額!」と持ち出す前例を作ってしまうことだ。

当然、日本航空は「ナショナルフラッグシップ」とされ日本の公共交通を担う企業であるが、日航以上に年金の積み立て不足がある企業(日立・NTT・トヨタ自動車・パナソニック・三菱電機・・・)なども同じように日本人の感覚では「つぶすには大きすぎる」企業である。
これらの企業は経営危機にまでは陥ってはいないが、米国ではGMはchapter11送りにしたように、日本政府はこれらの企業を法的整理する決断が出来るのだろうか。

「日本航空に公的資金」というニュースになると、「まず高給を削れ」「その前に高すぎる年金を減額しろ」というコメントがYahoo!ニュースなどに見られる。もちろん、批判する気持ちは分かるし、日航側は批判されても仕方ないと思う。しかし、だからと言って企業年金の強制減額をやってしまうと、国として由々しき前例を作ってしまうことになる。

では、どうすればいいのか。
「すんなりと」と書いたように、揉めに揉めればいいのだと思う。
公的資金の原資となる税金を出す国民の理解を得るために、公的資金注入の前に特別立法で企業年金を強制減額する、のはある面では筋は通っているように見えるが、そうなると全ての労働者(この場合は正社員か)にとって将来貰える企業年金が蜃気楼のオアシスのようになくなってしまうことになりかねない。

11/23/2009

【政策】補助金は成長戦略にならない

経済における第三の道ーーー菅直人公式サイト

菅直人副総理・国家戦略担当相が公式ブログに「第三の道」を考えていると述べている。それに対して、早速様々な人達がブログで反応した。

成長戦略とは競争戦略であるーーー池田信夫blog

菅さん、やっぱり官僚主導に戻そう!ーーー金融日記

下の金融日記を書いている藤沢数希氏は数日前のエントリーで以下のようなことも書いている。

成長戦略ってなんだ?ーーー金融日記


つまるところ、経済成長のための戦略とは「環境立国のために、補助金を出す」とかではなく、規制緩和や減税なのだ。
今の財政状況では減税は政治的に困難でも、規制緩和にはお金はかからない。

菅副総理は自民党の小泉・竹中路線を「批判」しなければならない立場に自分がいる、と思っているのもしれない。だから「第三の道」に逃げるしかないのかもしれない。しかし、その考え方こそが自縄自縛になってしまう可能性がある。

11/22/2009

【書評】クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス



人々の考えていることは、検索窓に打ち込むクエリーに如実に現れるーーー本書では(米国での)様々な事例を用いて、その可能性と限界を示している。

「データは嘘をつかない。ただし、解釈の仕方によってさまざまな落とし穴がある」と著者が言うとおり、問題はデータの内容ではなく解釈の仕方なのだ。「1/2」を「半分しかない」と解釈するか「半分もある」と解釈するかでは、事実は変わらないが理解が異なってくる。

本書での事例はほぼ全て米国で起きたことなので、身近には感じることのない名前ばかりだが、多少は日本人の行動に通じるものもある。年初の4~5日に「ダイエット」に関する検索が多くなるのは、先進国共通だろう。

インターネットを使った調査の最大の強みは「速報性」だ。本書の中でもその速報性を活かせば、経済指標が発表される前に数値を予測することも可能なのではないかと、チャレンジしたりしている。
もちろん、上手くいくこともあれば失敗することもあるのだが、重要なのは「人々の行動がネットでの行動に投影されている」ことだ。

こうしてブログを書いていることも、何かを検索することも、リンクを辿ってサイトを閲覧することも、すべて何らかの「意図」がある。しかもその意図はえてして無意識のなかにある。その無意識こそ、人々が今まさに考えていることを映しているのだ。

11/21/2009

【メディア】TV局の幻影肢シンドローム

昨日、フジテレビの番組「探そう!ニッポン人の忘れもの」をたまたま観た。その中で、70~80年代のテレビ局の報道と現在の報道の違いをやっていた。
印象に残ったのは内容よりも、司会の小倉智昭氏が「インターネットの書き込みなどは匿名でどんどん酷くなっていくが、我々は真実を報道しなくてはならない」と纏めていた場面だ。

この発言はテロップにもなって強調されていたが、今のテレビ業界を「幻影肢シンドローム」を象徴している。
幻影肢シンドロームとは、『戦場で右腕を失った戦士が「右手の中指が痒い」と感じる』という症状で池田信夫氏もブログで記者クラブや興銀などを例に出していたが、小倉氏の発言も同じことだ。

インターネットを敵視してテレビ局の存在意義を正当化したい気持ちは分からなくもない。しかし、それに共感出来るのはテレビ局からの収入で生活する人たちか、ただテレビが大好きな人たちだけだ。



この本の中で著者の中川淳一郎氏は「最強メディアは今も昔もテレビ」だと述べていた。しかし、それはあくまで「低俗的なものに関しては」だと思う。中川氏も「頭の良い人ではなく、普通の人・バカの人の話」と述べていることを考えると、テレビ業界はこれから「低俗的な番組」を出し続けていくしか活路はないのかもしれない。

「真実を報道する」ことをインターネットは出来ない、と思う人はいないだろう。しかし、「低俗的なこと」(何が低俗的で、何がそうではないかの区別は人それぞれだが・・・)を映すのは相変わらずテレビ局に一日の長があるのではないだろうか。

11/20/2009

【経済】ケインズ経済学がダメな理由

金融日記---景気が悪くて需要が足りないから財政出動するという考えが日本経済をボロボロにした

様々な本やブログなどで、「ケインズ経済学はダメだ」という文章を目にしてきた。なんとなく分かった気がしていたのだが、自分の中でうまく整理できておらず、もし他の人に説明する機会があってもちゃんと説明出来ないなぁと思っていた。

そこで、このエントリーを読んでスッキリした。

改めて感じたのは、政府のジレンマだ。これは日本に限ったことではないが、政治家にとっては「選挙」は絶対に軽視出来ない。むしろ、それが全てだとも言える。
その制約の中で、「景気が悪い」となれば「政府が景気対策をする」ことがある意味当たり前になっているとすれば、ケインズ経済学を拠りどころにするしかないのかもしれない。

「景気対策」を錦の御旗に赤字国債を発行するのは、需要の先食いであり将来にツケを回しているだけだと実証され、パブリックなコンセンサスになるのはまだまだ先かもしれないが、手遅れになる前に何か打つ手はないものか。

11/19/2009

【書評】タッチ1秒パソコン術



800円も出して買う本かな、とも思ったがこういうツール本は新書の形で手元に置いておきたいので買ってみた。
基礎中の基礎から書かれているが、なるべくマウスやタッチパッドを使わないためにまずはココからマスターしたい。

まだエクセルを使う機会はほとんどないから、社会人になったらエクセルのショートカットキーなどを覚えたい。

【経済】激変の時代は本当か

「最近は時代の変化が速くなった」

このフレーズを見たり聞いたりすることは非常に多いが、日常的に見聞きするため、納得したことはほとんどない。常に言われているということは、変化のスピードは「速くなった」のではなく「常に速い」のだ。
さらに、(これはコトバの問題だが)あるモノのスピードが「常に速い」ということは「一定の速度」で常に変化しているということだ。

自分は冒頭の台詞を見聞きする度に、「ただそう思いたいだけなのではないか」と穿った見方をしてしまう。そこで、そもそも「時代の変化」をどう測ればいいのかを前から考えていた。

結論から言えば、自分と歳が離れた人と自分を比べて「同じ歳だった時期の感覚」を比べることが、時代の変化を肌で感じられると思う。例えば、5歳年下の人と自分とでは携帯電話に対する関わり方が大きく違うだろうし、10歳年上の人と自分とでは自動車に対する考え方が違うかもしれない。

つまり、「感覚のズレが生じる年齢差」こそ時代の変化のスピードになるのだ。おそらく、現代におけるこの年齢差は上昇(=変化が遅くなる)はしていないだろうが、大きく縮小(=変化が速くなる)もしていないというのが自分の仮説だ。

もちろん、この指標だけで時代の変化のスピードを測るのはかなり危険だ。世代内の感覚のズレなども生じている可能性だってある(自分の感覚ではほとんどないが)のだから。

「ドッグイヤー」という言葉は、犬の1年はヒトの7年に相当するということから短い期間に様々なことが起こるを意味する。この前ちょうど自分と7歳年が離れた女子高生と少し話す機会があったが、7年前の自分たちの世代とあまり変わっていないように感じた。

時代は常に変化している。立ち止まることはないが、急に速くなることもない。これが自分の仮説だ。

11/18/2009

【書評】親子就活 親の悩み、子どものホンネ



現代の就職活動における親と子のリアルーーー読んでいてココは我が家と同じ、ココは我が家とは違う、など色々感じた。後者の方が多かった(そう思いたいバイアスが掛かっているとも思う)が、一方で40代~60代の親世代の価値観からも自分の価値観は離れていた。

自分の経験から言えば、高校受験・大学受験・就職活動などの「進活」や「就活」において両親から押し付けられたことはほとんどなかった。また、高校時代・大学時代の学校の友人を見てもそのような人達は少なかった。それが「普通」だったのは、もしかしたら大学においても就職先においても親もよく知っている、いわゆる有名大学・有名企業だったからなのかもしれない。

親から進路についての「押し付け」は皆無でも、多大な「支援」は逆に普通以上に受け取っていたと思う。3人兄弟で3人とも私立の幼稚園・小学校・高校・大学まで通ったという客観的事実から観ても、資金面での支援は非常に大きかった。それでいて、親はほとんど口出ししてこないのだから、今更ながらなんて自分は恵まれた家庭に育っているんだと痛感する。

本書では、「親と子の距離感」についての著者の考え方が記されている。一番心に残ったのは、「辛そうな子どもが不憫なのではなく、辛そうな子どもの姿を見ている自分が辛いだけではないのか」という言葉だが、この言葉こそ現代の
親と子の距離感を象徴している。

11/17/2009

【書評】「作る」キヤノンを支える「売る」キヤノン



この類の「企業取材本」は、企業の中身を知れるという点では面白いしサクセスストーリーとして読むのならよく出来ている。



上記の本もクックパッドへの取材をもとにして書かれているため、内容は濃く、新鮮な考え方も多くあった。

しかし、これらの本を読んだ後の消化不良感はいつも拭えない。それはおそらく、他社比較がないことや強みにフォーカスし過ぎていることから来ると思う。

本書の主役、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)の掲げる姿勢「顧客主語」。言うは易し行うは難しだが、営業活動の上で忘れてはならない姿勢である。

11/16/2009

【経営】鴻海が7兆円企業に

家電組み立て世界最大手、液晶4位を合併 「鴻海」が7兆円企業に

これで液晶パネルのシェアは、1位:サムスン電子・2位:LGディスプレイ・3位:AUO or CMOとなった。AUOはacerグループ、CMOは鴻海グループである。
サムスンの最近の決算が好調だったことはよく知られているが、実は韓国・台湾のエレクトロニクス産業は現在非常に勢いづいている。


上記の本でも指摘されているように、韓国・台湾の企業の体質は日本の電機企業とは全く異なる。「欧米企業との水平分業」「素早い意思決定」「最初からグローバル市場を見据えている」など、日本の電機産業にはない要素が備わっている。

11/15/2009

【書評】3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代



これから、自分と同世代の若者が戦わなければならないものは間違いなく「既得権」だ。しかしそれは、既得権を得ている層を引き摺り下ろすのではなく、自分達がその価値感に染まることを避ける戦いである。

それは気持ちの話ではなく、構造の問題だ。最低賃金の引き上げや、製造業派遣の原則禁止などの小手先の政策ではなく、同一労働同一賃金や職能給へのシフトによって構造を変えなくてはならない。

また、本書でも指摘されているように左派政党などのメディアのスケープゴート論にも騙されてはいけない。共産党の存在意義である労使闘争はもはや昭和の思い出なのだ。

【IT】電子デバイス戦国時代

単機能デバイスは消え去るのみ---IT Media

ここ1~2年は様々な電子デバイスが登場した。ネットブック・iPhone3G・Android・Kindleは世界中で発売され、日本でもキングジムのpomeraやSHARPのNetWaklerや東芝のスマートフォンT-01Aなどが市場に投入されてきた。

キャズム理論におけるearly adoptersに属する(と自分で思っている)自分はネットブック・iPhone3G・Androidを手に入れ、実際に使ってきたが最近はiPhone3Gに統一されてきた感がある。

ネットブックに関しては市場で多くの商品が出回る前に購入したので、WindowsVistaがインストールされているがかなり動きが遅いのでいつの間にか使用しなくなった。お金がなかったので、イー・モバイルなどのデータ通信に加入しなかったのも使わなくなった理由のひとつかもしれない。

Androidはこれもまた日本での発売直後に購入したが、アプリケーションなどの不足感と端末のスペック(動作ではなく、赤外線通信がついていないなどの機能面)が不満で、結局前のケータイに戻してしまった。これに関しては、アプリケーションなどの不安面が解消されたら再び使うかもしれない。

一方でiPhone3Gは使わない日がない。最近は使っている友人も多くなったが、皆満足しているようだ。

Kindleが日本語対応になったら是非買いたいと考えているが、電子ブックリーダーという単機能では「キャズム」は越えられないかもしれない。

iPhoneが市場を制した、とはまだ判断できない。しかし、「多くの機能が組み込まれている」「UIが使いやすい」「モバイル性に優れる」という点では現在では電子デバイス市場のトップを走っていることは間違いない。

11/13/2009

【Mobile】復元して気付いたiPhoneの有用性

iPhoneが何の前触れもなしにiTunesと同期できなくなり、色々イジったが結局工場出荷時の状態に復元せざるを得なくなった。

そこで気付いたのが、なくしたデータはSugarsyncで同期していなかった写真くらいということだ。他のケータイを復元するとなると、連絡先・メール・写真・着うた・ブックマーク・アプリケーションなどが消える(無論、バックアップがとってあれば別だが)。
しかし、iPhoneの場合はほとんどのデータはネットワークかPCのiTunes上に置いてあるため、復元してもデータが消えるという痛みはほとんどない。連絡先はGoogleContact、メールはGmail、カレンダーはさいすけでGoogleカレンダーと同期、写真などはSugarsync、音楽・アプリケーションはiTunes(PC)なので、再びもとの状態に復元出来る。もちろん、設定など細かい点は自分でやりなおさなければならないが、ポジティブに考えれば音楽やアプリケーションなどは今まで使わずに残しておいたものを外す機会にもなる。

もともと、クラウドとの親和性が高いと言われていたiPhoneだが、アプリケーションだけでなくデータの保存に関しても有用だとなれば天晴れと言う他ない。

11/12/2009

【書評】プロフェッショナルたちの脳活用法



まず、本書は脳活用法の本ではない。登場する人々は意識して脳を活用したのではないからだが、だからこそ色々な人の考えていることが分かって面白い。

「逆に雁字搦めのなかに、実は建築をいい味にするヒントが隠されている」という制約をヒントにする隅研吾氏、「子どもの自分って捨て去ってしまったなんていうけど、実は忘れているだけなんですよ」と好奇心の大切さを説く荒井良二氏の言葉などは非常に示唆に富んでいる。

茂木健一郎氏や勝間和代氏の著書は本屋で本当によく見るが、あまり手は伸びない。もちろんほとんど読んでいないのだが、あれほどハイペースで発行されると1冊1冊の重みが感じられなくなってしまうし、(イメージ先行だが)自己啓発本にしか思えない。自己啓発というジャンルも曖昧だし、価値がないとも思わないが、自分の中で興味が薄れてきているのは確かだ。

【経営】規模拡大でのコスト削減という幻想

10月26日(月)の日経新聞の「経営の視点」という連載コーナーに、小売業の常識を破る内容が載っていた。それは小売業における「規模の追求」は単純にコスト削減&低価格化にはつながらない、というものだった。

その構図はこうだ。
●基本的には、規模による仕入れでコストが下がり、低価格を実現する。
●しかし、そもそも小売は製造から流通までの流通段階で利ざやが薄くなり川下での劇的な価格引き下げは困難である。
●巨大化すると人件費などの組織運営コストが肥大化する。
●結果的に、規模による仕入れで得たわずかな利益をオペレーションコストが食いつぶす。

この構図の象徴がイトーヨーカ堂の営業赤字で、逆にこの構造に逆らっているのがユニクロやカインズなどだ。
ユニクロなどは、川上に自ら攻め込み、マーケティングの嗅覚も培っている。

「規模拡大」志向は良いとも悪いとも言えない。ただ、「規模を拡大すればいい」志向は間違いだ。それによって失うものを過小評価してしまっている。

11/11/2009

【Mobile】Wi-Fiに逃げるソフトバンクモバイル

iPhoneに続け? ソフトバンク孫社長がWi-Fi携帯を売り込む事情---石川温のケータイ業界事情(IT-PLUS)

NTTドコモ・ソフトバンクモバイルが冬春モデルの新製品を発表した。今回はAndroidやiPhoneなどの目玉となる製品の登場はなかったため、そこまで話題にはなっていないが、ここ最近は「増幅するトラフィック」への対応に各社が腐心する姿がよく目につく。

NTTドコモは「128kbps」という亀のように鈍いデータ通信サービスを導入してきたが、逆に言えば「低価格での大容量3Gデータ通信」はトラフィックがもたないのだろう。

ソフトバンクモバイルは「Wi-Fi」という「今更」感たっぷりのサービス。いまやWi-Fi機能はSDカードなどにも付いているから、携帯電話に付いた所で全く驚きはしないが、ソフトバンクモバイルの孫正義社長は「3Gより格段に速い通信が出来ます」という。これも逆に言えば「少しでもWi-Fiにトラフィックを逃したい」ことが本音だろう。

これを書いていて思ったのが、「たばこ増税」の構図と同じということだ。「健康のため」と必ず言うが、少しでも税収を増やしたいというのが明らかに増税の理由だ。

本音と建前はいつの時代にもあるものだし、建前は使いようによっては有効だと思う。しかし、すぐに見破られてしまうような戦略的でない安易な建前はあまりにも惨めだ。

11/10/2009

【経済】温暖化問題が既得権になる日

地球を冷やす安価な方法---池田信夫 blog

最近読んだ色々な記事の中で一番衝撃的だったのがこれだ。「地球温暖化」というは先進国が産業革命以降に犯したものだから、今後CO2などの温室効果ガスの排出を削減することで罪を償っていかなければならない、というのは世界中のコンセンサスだ。

しかし、「温暖化を防ぐ」という目的のための手段は「温室効果ガスの排出削減」しかない。というのは非常に危険な考え方だ。
温室効果ガスの削減よりも、非常に安価な方法で地球を冷やす方法があったとしたら?
そもそも太陽活動が減衰期に入ってきていて、これから地表の平均気温が上昇いないとしたら?

「温暖化対策」という大義名分が崩れたとき、「罪を償わなければならない」と叫ぶのは温暖化対策で富を得ている新しい既得権層なのではないか。

11/09/2009

【IT】10年後のパソコン

デルAdamo XPSは11月18日発売、17万4000円から---engadget Japanese

新しいPCのニュースを見ると、マイクロソフトの採用面接で「10年後のPCってどうなっていると思いますか?」と聞かれたことを思い出す。どう答えたかはよく覚えてないが、確か無線LANが街中に張り巡らされていて誰もがPCをどこでも扱うようになっていると答えた気がする。今思えばこれは「使い方」の話であり、現在の延長線上以外の何物でもないから、的外れでつまらない回答だ。

これからPCはどう進化するのだろうか。デルの新製品のように「薄く」やVAIOのTYPE Pのように「軽く」、エイサーのPCのように「安く」は当然の流れだと思うが、「薄くて軽くて安いPC」はそもそも大きな需要を生み出せるのだろうか。ビジネスマンには需要があるかもしれないが、これも現状の延長線上に過ぎない。

学生や女性もある程度は日常的にPCを使っている。しかし、「安い」は嬉しいかもしれないが「薄くて軽い」必要は必ずしもない。OSもWindows7でもXPでも、どっちでもいいのかもしれない。そもそも、PCよりも携帯電話のほうが身近だろう。

もし、PC市場の起爆剤があるとすれば、現状の延長線上にはない「何か」だろう。答えは今は思いつかないが、考える価値はある。

11/08/2009

【経営】外国車メーカーの日本撤退

東京モーターショーに外資系の自動車メーカーがほとんど出展しなかったことはニュースになっているが、水面下では外車メーカーが日本からかなり撤退している。

これはニュースソースもなく、自分で見た上での感覚の話なのだが、神奈川県では東名横浜町田のGM、六会のJaguar、湘南台のFord、辻堂のRENAULTのディーラーが今年撤退した。

撤退の理由は「売れない」ことに尽きるだろう。エコカー減税の対象車もほとんどラインナップになければ消費者の足は遠退くばかりで、市場全体もほとんど伸びる余地がない日本市場はメーカーにとっても魅力的ではないのだ。

しかし、だからと言って外車メーカーは日本から退場するしかないということにはならない。既存のメーカーでなくても、「破壊的イノベーション」で参入できる余地があると思う。ガソリンエンジンからEVへの転換が様々なメディアで報じられているが、それと同時に垂直統合から水平分業も進む可能性がある。「自動車のPC化」とも言うべきか。OS・CPU・HDD・グラフィックチップ・モニター・組み立て・流通など、PC製造における水平分業が自動車業界でも起こる可能性はある。

11/07/2009

【書評】非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学



標準的な経済学に「情報の非対称性」というエッセンスを加えた場合の需要や価格などの変化を簡潔に示している。無論、情報の非対称性を加味すればしっかり現実を説明出来る、という訳ではない。除法の非対称性であれ他の要素であれ、それを考慮したときにどのように変化しどのような示唆が得られるかが重要なのである。

著者は2002年時点での日本経済を「非効率なナッシュ均衡」状態と指摘している。2003年~2007年までは景気拡大局面であったが、この非効率なナッシュ均衡はほとんど解消されていない。2009年現在、政権交代が起こったが、新政権からは効率性という言葉は聞こえてこないし、これからもテーマになる気配もない。日本に必要なものは、池田信夫氏が言うように「明日はよくなるという希望ではなく、変えなければ明日はないという絶望」なのかもしれない。

11/06/2009

【IT】AmazonがPBを販売

アマゾンでプライベートブランド『Amazon ベーシック』‐‐‐マイコミジャーナル

アマゾンがプライベートブランドを販売する。
アマゾン・ベーシックというブランドで販売するが、アマゾンの戦略はなかなか興味深い。Kindle、クラウドなどの先進的な取り組みからプライベートブランドと自社製品を多く出してきている。

KindleやPBは現在の通販ビジネスと競合する気もするが、そこを看破しようとするところが面白い。

11/05/2009

【NEWS】フィオリーナ氏が米上院選に出馬へ

フィオリーナ氏が米上院選に出馬へ 米HPの元CEO‐‐‐NIKKEI NET


Hewlett-Packardは個人的に好きなメーカーだ。次にWindowsのデスクトップPCを買うときはHPにしようと思っている。モバイルPCならVAIOのXシリーズで、それと別にMacも欲しい。全て揃うのはかなり先の話になると思うが、とりあえずデュアルモニターに憧れている。

さて、そのHPの全CEOであるカーリー・フィオリーナ氏が米上院選に共和党から出馬するらしい。受付からCEOになり、コンパックとの合併の成果が出ずに事実上解任された、ぐらいしか知らないのでこの機会に私はこうして受付からCEOになったを読んでみようと思う。

11/04/2009

【書評】ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語



こういうノンフィクションはほとんど読んだことがなかったので、非常に新鮮だった。300ページに及ぶ、新書にしては長い内容で、前半部分は1990年前後という自分がゲームもウェブも実感したことのない時代だったので、懐かしさなどはないがココにドワンゴのルーツがあるのだろう。

面白かったのは「同期と非同期」「送り手と受け手」「不完全なままのリリース」などの考え方だ。
「同期と非同期」は自分の中でもまだ上手く整理できていないのだが、ネット上のサービスだけでなく様々なことに応用できる考え方なのかもしれない。
「送り手と受け手」を明確に区別することや、「完全な状態でのリリース」は今までの常識であったが、これからもそれらを守り続ける必要はない。

11/02/2009

【映画】THIS IS IT

もうこんなエンターテイナーは現れることはないのだろうな。その理由はマイケル・ジャクソン自身の魅力が半分、ウェブなど時代の影響が半分であるが、前者を知るためにこの映画はもってこいだ。
自分はマイケル・ジャクソンの全盛期に音楽を聴くことはできなかったが、彼の能力・感覚・こだわりをこの映画を通じて知ることができた。