OBの企業年金は強制減額すべきではないーーー山崎元
今朝のニュース番組で昨日行われた、日本航空の企業年金減額に関する労組・OB向けの説明会の様子を放送していた。
報道陣は会場内に入れなかったようなので、OBへのインタビューが中心だったが、「納得できない」という人から、「仕方がない」という人までいた。
自分としては、すんなりとは強制減額するべきではないと考えている。
日航の企業年金が増えても減っても、自分のサイフには直接の影響は何もない。しかし一番懸念されるのは、これから経営不振に陥った企業やその債権者が「日航の例に倣って、まず年金減額!」と持ち出す前例を作ってしまうことだ。
当然、日本航空は「ナショナルフラッグシップ」とされ日本の公共交通を担う企業であるが、日航以上に年金の積み立て不足がある企業(日立・NTT・トヨタ自動車・パナソニック・三菱電機・・・)なども同じように日本人の感覚では「つぶすには大きすぎる」企業である。
これらの企業は経営危機にまでは陥ってはいないが、米国ではGMはchapter11送りにしたように、日本政府はこれらの企業を法的整理する決断が出来るのだろうか。
「日本航空に公的資金」というニュースになると、「まず高給を削れ」「その前に高すぎる年金を減額しろ」というコメントがYahoo!ニュースなどに見られる。もちろん、批判する気持ちは分かるし、日航側は批判されても仕方ないと思う。しかし、だからと言って企業年金の強制減額をやってしまうと、国として由々しき前例を作ってしまうことになる。
では、どうすればいいのか。
「すんなりと」と書いたように、揉めに揉めればいいのだと思う。
公的資金の原資となる税金を出す国民の理解を得るために、公的資金注入の前に特別立法で企業年金を強制減額する、のはある面では筋は通っているように見えるが、そうなると全ての労働者(この場合は正社員か)にとって将来貰える企業年金が蜃気楼のオアシスのようになくなってしまうことになりかねない。