教科書的な経済史ではなく、バブル崩壊以降なぜ日本経済は「失われた時代」を過ごさなければならなかったのかを、戦後ではなく「戦時経済体制」にあると解説する。
著者の野口悠紀雄さんは、東大を卒業後大蔵省に入省しているため、そのときの記憶も混ざっており、その点も考えると「経済史」というタイトルは誤解を招くかもしれない。
終戦直後の経済体制といえば、城山三郎さんの「官僚たちの夏」が思い浮かぶ。自分はもちろん生きていなかったので、どれほど正しく記述されているのか分からないが、「日本の産業を外資から守り、育成する」ことが通産官僚の頭の中にあったのはおそらく事実だろう。
通産省が「育成」しようとした産業は、結果的に国際競争力を身に付けられなかったことはマイケル・ポーターの「日本の競争戦略」で実証されている。重要なのは、守ることではなく「海外の企業と対等に戦える条件を揃えること」なのだ。
そもそも、競争力のある企業からしたら「政府に守ってもらいたい」などは思っていないはずだ。逆に、日本航空など競争力がなくなった(もともと無かったと言った方が正しいのかもしれない)企業が政府に助けを求めている。やはり、日本航空は破綻させたほうがよかったと思う。