2/04/2010
【書評】モノづくり幻想が日本経済をダメにする―変わる世界、変わらない日本---野口悠紀雄
本書のamazonでの書評欄はなかなか面白いことになっている。
8件のレビューのうち、★×4以上が5件と★×2以下が3件で中間は無し。この評価を分けたものは金融危機だ。
評価が高い人は「日本の問題は構造的で、これからもモノづくりで成長出来る訳ではない。金融危機が起こったからからといって、金融やIT産業を放置してはならない理由にはならない。」と言っていて、
評価が低い人は「金融やITに傾斜した国々の惨状を見れば、野口氏の提言がいかに危険か分かる。」と言っている訳だ。
個人的には前者とほぼ同意見だ。端的に言って、中国で作ればいいものを日本で作る理由は乏しいだろう。
また、この2冊を読んでいても、日本の製造業の競争力がいかに失われつつあるかが分かる。もちろん、日本の全ての製造業がダメになっていくとは思わない。
中国などに出来ないビジネスモデルを構築出来た企業は生き残っていくだろう。もしくはアップルなどのように、マーケティングやデザインなどに特化した企業も出てくるかもしれない。
一つだけ間違いないのは、新興国で出来ないことをやらなければ日本全体が沈没してしまうということだ。
確かにITバブルははじけ、金融危機も起こった。ITや金融に脆弱性があるのは明らかだが、ITによる生産性の向上や金融による資本の流動化こそ、これからの日本に必要なことなのだ。