1/05/2010

【書評】満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う



自分は高校に入学したときから、電車を通学で日常的に使うようになった。大学時代は毎日使っている訳ではないが、おそらく4月からの社会人生活では通勤で再び日常的に電車を利用することになるだろう。
もしも現在住んでいる神奈川県藤沢市から東京の有楽町(内定先起業の本社がある)まで通勤することになったら、ほぼ間違いなくJR東海道線を利用することになる。「朝の東海道線上り電車」と言えば沿線に住んでいる人だけでなくとも「満員電車」であることは想像に難しくないどころか、もはや既成事実だ。

本書では、その日本の首都圏において既成事実化した「満員電車」を無くすための術を「運行方法」「運賃」「制度」の面から考察している。技術的な記載も多少あるが、鉄道イノベーションの入門書としては過不足なく記されていて読みやすい構成になっている。同じ交通のことを題材にした西成活裕氏の「「渋滞」の先頭は何をしているのか? 」と共に交通について考えるキッカケを与えてくれる本である。

著者の阿部等氏は敢えて書かなかったのかどうか分からないが、本書に記された鉄道イノベーションを実践するための一番のハードルはコストでもなく技術でもなく「既得権益」だと思う。
もしも物流の長距離トラックをモーダルシフトさせることが利便性の面から可能になったとしても、それによって失われる雇用の問題が大きくクローズアップされ、業界団体・労働組合などからの反発は必至だろう。