1/15/2010
【書評】傷つきやすくなった世界で---石田衣良
ある現象が名前という言葉を得ることによって、現実を加速させることがよくある。「格差社会」「勝ち組負け組」などの言葉を得た現象が、言葉を得た途端に現実を急加速させている。
格差社会の中で非正規雇用という負け組だけど、そうなったのは自己責任で、いつネットカフェ難民になるか分からない・・・ここ数年でよく聞く新語が現実をつくる傷つきやすくなった世界で、作家の石田衣良氏がエッセイを通じて、エールを贈る。
本書は「R25」の連載をまとめたエッセイ集。作家らしく、独自の視点と独自の言い回しで、タイムリーな話題を語ってくれる。
「打たれ強く生きる」も連載をまとめたエッセイ集だったため、本書と同様に一つ一つの話は字数に制限があった。
しかし、むしろその制約が話をコンパクトにまとめて読み易くしているし、城山三郎氏や石田衣良氏など書く側にとっても制約があるからこそ色んな選択肢の中から言葉を選んでいるのではないかと思う。