生活保護や派遣切りに関しては「反貧困」、ワーキングプアに関しては「ワーキングプア」を読めば足りることは足りる。この2冊の方が実例も多く載っているし、よりリアルを感じられるかもしれない。
ただ、(2冊を読んだ後だからなのかもしれないが)本書には根底にある深い深い問題提起がある。
ーーーどこまでが自己責任なのかーーー
生活保護は市区町村の福祉事務所に勤めるケースワーカーが担う仕事だが、ケースワーカーがいかに「自己責任」について悩んでいるのかが、本書を読むととてもよく分かる。
本書が秀逸なのは、貧困の救済をただ訴えるのではなく費用と便益を考慮して効率的な運用をすべきだと主張していることである。
費用と便益を考慮した制度設計、というのは実は教育においてすでに構築されている。学校教育にかかる費用を個人ではなく国民で負担するというコンセンサスは、「費用と便益」の面から考えてそうすることが有益だからである。ミルトン・フリードマンはもっと効率的な制度を考えているがそれはまた今度。
貧困問題にはどうしても自己責任という言葉が付き纏ってしまって「費用と便益」という視点が失われがちだが、教育と同じように制度設計する必要があるのかもしれない。