1/14/2010
【書評】戦後世界経済史―自由と平等の視点から---猪木武徳
高校生の頃、一番苦手だった教科は世界史だった。と、言っても1年生でしか履修していなかった(3年前くらいに、この事が問題になって後輩が期末試験後に1週間くらい集中講義を受けていた)が、理系に進むことを決めていたため、受験に必要ない世界史と生物はテスト前の付け焼刃の詰め込みで乗り切った思い出がある。
本書は世界史と言っても、「戦後」と「経済」に絞っている。それでも、新書にして400ぺージを超える分量であり、読み始めてから読み終わるまで足掛け10日もかかった。
自分の中学校までの学校教育における「歴史」は、主に出来事を年号や人物名でとにかく覚えていくものだったが、本書は人物名や出来事などの固有名詞をなるべく登場させず、副題である「自由と平等の視点から」読者にさまざまな歴史を問いかけてくれる。
戦後とは言え、対象は「世界」なので個々の事象に関しての記述は深いものではない。しかし、逆に言えばこの本を出発点にして歴史を考えていこうというキッカケを与えてくれている。
著者の最大の問い掛けは「自由」と「平等」という二つの理念はどのような形で両立されるのか、である。平等を追い求めた社会主義が戦後どのような経緯を辿ったのかは周知の通り(本書ではその理由もしっかり記載されている)だが、資本主義国家でも「法の下の平等」はなくてはならないものであり、二つのトレードオフをどうバランスさせるかの解は非常に難しい。
この本を読んで、もっと資本主義について(それとともに社会主義についても)考えてみたいと思った。ハイエクとフリードマンは、社会人になる前にしっかり読んでおきたい。