1/24/2010

【書評】最強の経済学者ミルトン・フリードマン---ラニー・エーべンシュタイン



タイトルの通り、経済学者・故ミルトン・フリードマンの障害を綴った伝記になっている。本人だけでなく、ローズ・フリードマンやフリードリヒ・ハイエク、ジョン・メイナード・ケインズ、ロナルド・レーガンなどフリードマンに関係する家族から経済学者・政治家とのエピソードが語られているため、フリードマンの思想よりもフリードマンがどのような環境で過ごしたのかが分かる内容になっている。

この本を読んでいた今週、フリードマンの故郷米国では興味深い出来事が二つ起こった。マサチューセッツ州上院選での共和党勝利と、オバマ政権の金融規制案だ。

フリードマンなどリバタリアニズムの思想に触れるまで、マサチューセッツ州で民主党が敗北する大きな要因になった、オバマ政権の進める米国の医療保険改革が進まない理由がよく分からなかった。保険会社の既得権を守るためだけかと思っていた(実際にそういった面もあるだろうが)。
しかし、米国の「小さな政府」を求める保守主義は個人の尊重や市場の効率性への信頼、政府への疑義など非常に厚い思想になっている。よく日本で批判される「市場原理主義」とか「強欲」などの汚く聞こえるものではないのだ。
また、「~原理主義」と言うと全て悪く聞こえるし、その定義もよく分からない。あと、資本主義で「強欲」を批判するのは宗教にしか見えない。

日本のマスメディアは民主党の小沢幹事長に対する東京地検特捜部の事情聴取に余りにも時間を割きすぎて、上記の出来事はおろかハイチの地震のことも報道しない。
米国での「小さな政府」「大きな政府」論争は日本にとっては他人事ではないと思うのだが。