1/12/2010
【書評】打たれ強く生きる---城山三郎
amazonのリンクは文庫本だが、読んだのは父親から譲り受けたハードカバーの原著。なんと、自分が生まれた年に出版された本だ。
こういう古い本を読んで意味があるのかとも言えるが、本は自分が読んで情報を仕入れるものというより、逆に本の方から自分に語りかけてくれるものなのだと思う。
本書はエッセイ集で、昭和58年の日経流通新聞に掲載されていた「人生のステップ」+αで構成されている。
しかし、読んでいてそんな前に書かれたエッセイであることを感じることはほとんどなく、いま読んでも十分心に刺さる話ばかりだ。
一番心に残ったのが、「二つのとき」という話。
稲葉さん(元産経新聞社 社長)はどう生きたか。
「成るようにしか成らぬとはらをくくる。」
絶望ではなく観念するのだ。
ただ同じように難しい局面だが、
あえて命がけでも挑戦すべき局面が、人生にはある。
「いまここで立たなければ人生の意味はない。」
「成るようにしか成らぬ」ときと「いま、ここ」というとき。
この二つをはっきり見分けていずれも、
はらをくくって対処してきた。そこに稲葉さんの今日が在った。
The Beatlesの「let it be」という曲があるが、これを初めて聴いたとき(たしか、中学校の英語の授業だった)は素直に「成るようにしか成らないのなら、努力の意味がないじゃないか」と思ったことをよく覚えている。名曲だと言われても、一種の「諦め」の曲だと思ったのだ。
しかし、「二つのとき」に出てくる稲葉氏は「成るようにしか成らぬ」ときは観念したという。
言うまでもなく、大事なのはこの「二つのとき」を見分け、使い分けることだ。おそらく、自分にもこれから色んな難しい局面が来るのだろう。そのときはこの話を思い出したい。