12/03/2009
【書評】チャイナ・アズ・ナンバーワン
今後、中国に関する本を読むことになると思うが、どんな本を読んでもこの「チャイナ・アズ・ナンバーワン」を読んでおいてよかったと思うだろう。タイトルこそ80年代後半の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から来ているが、内容は非常に多くの統計データを基にしていて読みやすい。
様々な側面から中国を捉えているため「広く浅く」なっているが、だからこそ「中国入門」としてよかった。
以前読んだ、老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるときにもあったが中国が今後も成長を続けていくためには「生産性」という壁がある。もちろん、世界一の人口大国として労働人口という比較優位がすぐに揺らぐわけではない。しかし、2010~2015年にかけて労働人口比率がピークを迎え労働人口も減少に転じる。
この事実は中国にとっての試練であると同時に、日本にとっても大きな試練である。
著者は最後に日本への提言も加えているのだが、その中に「日本人の直接投資に関する誤解」というのがあった。
例えば、日本に得意分野である自動車産業において貿易障壁がなくなり年間100万台が中国に輸出できるようになれば、得意分野(=賃金が高い)かつ国内で多くの雇用機会(グッド・ジョブ)が生まれることになる。
しかし、日本における産業空洞化の議論はこの観点が抜けている。日本がもはや比較優位を持たない産業が古い工場を畳んで中国に持っていくと、従業員の解雇が問題になる。逆に、日本が比較優位をもつ分野の企業が中国に工場を建てると、「市場開拓」として評価される。これは衰退産業の保護であり、産業の高度化を遅らせている。本来は衰退産業を海外へ移し、得意分野を強化すべきなのだ。そのためには自由貿易が是が非でも必要になる。
この点に関しては自分も抜けていた。今後は中国をはじめとする新興国の企業のキャッチアップが日本の産業の課題になるが、「比較優位」をどうやって活用すべきなのかは考えていく必要がある。