12/23/2009

【書評】間違いだらけの経済政策



エネルギーや穀物などの商品価格の傾向的上昇と、ハイテク製品の価格の継続的下落。この価格革命とも呼べる世界経済のパラダイムシフトに対応した経済政策を打たなければならないーーーこれが、「ミスター円」こと著者・榊原英資氏の本書の中での基本スタンスである。

タイトルが「間違いだらけの」となっているのは、従来のマクロ経済分析では構造変化による物価安定下(デフレ化)での景気拡大は説明出来ないため、インフレ・ターゲティング論が展開されてしまい、結果的に円安バブルを生み出してしまったことから来ている。

そして、資源の稀少化とハイテク製品のコモディティー化という構造変化に対応するために「円高」と「エネルギー・農業産業の振興」が必要だとする。

最近の「円高」というニュースに必ず付随するのが、「輸入物価下落によるデフレ進行」や「輸出企業の収益減少」などの懸念だ。(海外旅行が安くなるとか、輸入品の価格が下がるということも言われたりするが。)
本書の中でも榊原氏は景気が急速に冷え込んでいく中での急速な円高はマイナスになると指摘しているが、このような短期的な影響を考えるとともに長期的な影響も考えなくてはならないだろう。

※榊原氏は「国際協力銀行の解体・合併は失政以外の何ものでもない」と記しているが、この政策は事実上骨抜きになっている。国際協力銀行は日本政策金融公庫の国際業務という形式だが、日本政策金融公庫への統合は名前だけで実質的には独立して業務を行っていて、人材の採用・交流もない。