12/24/2009

【書評】テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか



テレビと新聞、この日本人の生活に深く深く根ざしたメディア産業の実態はそれ自体がメディアであるため、なかなか明るみには出て来なかった。いま「新聞社ー破綻したビジネスモデル」も同時に読んでいるが、テレビ・新聞を見ているだけでは絶対に分からなかったことを次々に知ることが出来ている。

本書を読むと、いかにテレビ産業が今まで上手い仕組みで回っていたかが分かる。「美智子さまご成婚」を契機にする国民的行事ともにテレビ受像機が各家庭に普及し、その影響力を背景に高い広告料を得て、高い制作費で「ウケる」番組を作る。そしてその裏で、コンテンツ(≒著作権)・電波は決して手放さない。

ただ、現時点では「ウェブはバカと暇人のもの」の著者・中川淳一郎氏も著書の中で述べているように、テレビは最強メディアであることに間違いないと思う。自分は5人家族(両親と姉弟)だが、家にいるときにインターネットばかりやっているのは自分だけだ。団塊世代の父親はNHKやドキュメンタリー、50代の母親はワイドショーやドラマ、20代の姉弟もバラエティやスポーツ番組を好んで視聴している。

以前、「そもそもなぜ人々はテレビを視聴し、新聞を購読していたのか」という疑問に対し「社会との接続のため」という回答があった。
「社会との接続」という意味では、90年代後半から携帯電話・インターネットというツールが急速に普及したため、消費者のなかでテレビ・新聞の価値が相対的に低下するのは自然な流れだ。

これからテレビ産業はどうなるのか。それは当然、テレビ自身の戦略次第だ。ただ闇雲に既得権を守ろうとすれば、その既得権自体の価値が薄れていくことになるだろう。