12/16/2009

【経済】出版業界は「不況」なのか


本の販売2兆円割れ 170誌休刊・書籍少ないヒット作---asahi.com

出版科学研究所によると、書籍と雑誌の推定販売金額が09年は2兆円を割り込むことが確実になった。1.93兆円になると予測されている。ピークの96年は2.65兆円だったのだから3割落ち込んだことになる。こうなると当然、休刊も数多く出てきている。

こうなった要因は様々であり複合的だと思うが、色々考えていみるとこの状況を「不況」と呼ぶのに違和感を覚えてくる。これから「好況」が来るとどうしても思えないのだ。

まず、考えられる要因を羅列してみる。

①インターネットの普及
 ①’PC・携帯電話の普及
②消費者の購買力の低下
③雑誌の広告の宣伝効果の低下
④人口の減少

一番大きいのは①と①’だろう。情報へアクセスする手段が90年代後半から劇的に変化した。ピークが96年ということは、Windows95が出た頃からずっと販売金額が落ち込み続けていることになる。それ以降、様々なWebサービスが出る中でブロードバンドのインフラが整い、携帯電話が普及してきた。インターネット・PC・携帯電話がない世界に戻ることは絶対にないだろう。

そして、②の賃金の低下が2兆円割れを招いた。経済的な理由から雑誌・新聞の購読を止めた・減らしたという人は少なからずいるだろう。しかし、賃金が上昇に転じたとしたらこのような人々は再び雑誌・新聞を購読するようになるのだろうか。購読を止めていた期間に「情報へアクセスする代替手段」を見つけたとすれば、紙媒体の雑誌・新聞を買う必要は薄れる。

③の理由は今日の帰り道に思いついたのだが、「携帯電話・携帯ゲーム機の普及で電車の中吊り広告の宣伝効果が低下しているのでは」という仮説から来ている。今に始まったことではないが、電車に乗るとき車内で携帯電話を扱っている人を見ないことはない。当然、そのような人の視線は自分の携帯電話に向けられていて、中吊りには向かない。よって、雑誌の中吊り広告が消費者に認知されず、その結果雑誌も売れなくなっているのではないか。

④はこれからジワジワとボディーブローのように効いてくるだろう。(人口が減り始めたのは2006年なので)

つまり、現在は「不況」という景気循環ではなく「長い下り坂」の途中というのが自分の考えだ。もちろん、何らかのイノベーションによって需要が喚起され、「上り坂」に転じる可能性もあるが。


ちなみにこのエントリーを書こうと思ったのは、ここ最近の自分は電車の中で必ず本を読んでいるからだ。乗ってから5分で降りるときも、数ページを必ず読む。今日の帰りも電車の中で本を読んだ後の帰り道、中吊りを見なくなったと思った。そして「中吊り見なくなったな」→「中吊りって雑誌が多かった印象がある」→「そういえば、書籍・雑誌が売れていないことが最近のニュースの中にあったな」→「売れていない一因は人々が中吊りを見なくなったから」と言った具合に考えて、思ったことを記してみた。