12/22/2009

【書評】ウェブを変える10の破壊的トレンド



本書が出版されたのは、07年12月なのでちょうど2年前の話になる。2年前というのはウェブの世界では遠い遠い昔の話とまではいかなくとも、すでに一昔前のトレンドの話と言える。だが、米国での先進的なウェブサービスを紹介しているので、そういった意味では新鮮な内容である。

この本を読んでいると、次から次へと斬新なウェブサービスが雨後のタケノコのように出てくる米国という環境が羨ましく思える(エンジニアとしてではなく、コンシューマーとして)。
翻って、日本から破壊的トレンドを牽引するようなサービスが生まれない理由は何なのか。

著者の渡辺弘美氏は
エンジニアが最大限創造性を発揮出来る環境が少ない
ことを挙げていた。


また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は以下のように述べている。
■アメリカは投資の規模が大きい
■人材の不足
■スタートアップベンチャーが活躍出来る場が少ない
日本ITの国際競争力---佐々木俊尚 より一部引用

また、楽天の三木谷社長はTwitterで以下のように言っていた。
少なくとも国家戦略担当の副総理が日本人はネットに対して否定的だというのは無茶苦茶不味い。ネットがわかる人を国のトップにしましょう。とても迷いましたが、敢えて書かさせてもらいました。
三木谷浩史 on Twitter
より引用


これだけ読んでも様々な要因がありそうなのが分かるが、自分はIT・インターネットの発展によって、既得権益を侵されている人・企業の抵抗が大きい、という理由を挙げてみたい。

先日はJTBが国内200店舗を閉鎖しネットを充実させるというニュースがあった。インターネットは日本人の生活に深く浸透してきたため、旅行業界にも変化を迫っているのだ。
新聞・テレビ・雑誌は関心を奪われ、インターネット専業の銀行・証券会社・保険会社が誕生し、年賀状はメールに代わっていき、百貨店はネット通販に押されるなど、様々な業界で「ネットによる既得権益への食い込み」が起きている。
他の国の状況はよく知らないが、日本は既得権の存在が非常に厄介だ。労働市場が流動的でないということも遠因になると思うが、「IT・ネットによって仕事が奪われている」ということが結構多いのではないか。もちろん、ネットを無くすことは事実上不可能なのでそんなこと言ってもしょうがないのだが。

自分は全くないので妄想だが、IT・ネットに対するネガティヴなイメージがあるとすれば、それも日本の競争力の向上を阻害しているのかもしれない。