12/30/2009

【書評】世界の下半身経済が儲かる理由―セックス産業から見える世界経済のカラクリ



以前、社会人の先輩が「この世から絶対に消えてなくならない産業はエロだと思う。エロやギャンブルは本当に儲かる。他の人になんの仕事をしているのか言いづらいだけ。」と言っていた。

本書のタイトルは儲かる「理由」というよりも「実態」といった方が正しいだろう。著者の門倉氏はエコノミストなので、数字で実態を把握した本である。
儲かる「理由」は単純明快で、人間の本能的な欲望が需要になっているからだ。そのため、規制によって撲滅しようとすることは事実上不可能である。

1930年代の米国での禁酒法が示す通り、巨人軍のような永久に不滅な需要は政府が規制してもどんどんアンダーグラウンド化するだけである。そこで門倉氏は「売春産業は合法化したほうが望ましい結果になる」と指摘している。
合法化することによって、従業員の健康保険・職場の安全確保の義務化や税金の支払い義務が生じるためだ。非合法所得への課税は大幅な税収増加につながるだろう。(門倉氏はソープランドの非合法所得を2005年時点で7364億円と推測しているため、10%課税するだけでも736.4憶円の税収増加になる。)

ただ、合法化するにしても総論賛成・各論反対になることは目に見えている。また先進国と発展途上国では、このような産業が国の経済に対して持つ意味(発展途上国で重要な外貨獲得手段になっている場合も多い)や、働く人々の同期も大きく異なるため各国がそれぞれの事情に合わせて規制の程度を決めなければならず、非常に難しい。
しかし、絶対になくならない需要に対しては規制強化=アングラ化は歴史が示す通りだ。

大切なことは「規制強化」という逃げ道に逃げず、議論を続けていくことなのだ。