10/27/2009

【書評】老いてゆくアジア



タイトルだけで衝動買いしてしまったが、内容は目から鱗だった。

アジア、特に東アジアがこれから高成長するのは間違いない。しかし人口構成から考察してみると、東アジアの国々はかつて日本も経験した「人口ボーナス期」にあるということが成長の大きな要因になっている。この人口ボーナス期が永久に続くことはあり得ず、いずれ高齢化の進展によって国内貯蓄率が低下し、高水準の成長は困難になる。

本書が秀逸なのは、「生産性」の観点から中国やASEAN4(タイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン)の高齢化に警鐘をならしている点である。これらの国では中高年の生産性が低く、人口ボーナス期が終わりに近づき生産性を上昇させることで成長を維持すべきときに、中高年の生産性の低さが足枷になる可能性があるのだ。

著者は最後に、

高齢社会そのものは「問題」ではない。高齢社会は長寿を可能にした社会であり、それ自体は繁栄の賜物である。「問題」は今後急速に増えていく高齢者に対して、安心して暮らせる社会を確立できるかどうかが不透明なことにある。

と述べている。これは、日本固有の問題ではなく、アジア全体の問題なのだ。