10/07/2009

【書評】行動経済学―経済は「感情」で動いている



消費者が「感情に基づいて」様々な行動・選択をすることを様々な理論・実験結果で示している。新書の割に400ページ近いが、改めて納得できる内容は多い。では、行動主体が企業や政府になったらどうなのだろう?この点についての記述はないが、少し考えてみたい。

この考察に関しては2つの方向性がある。
■企業も政府も、とどのつまり人間の集まりであるから、行動経済学で示されているように「感情」で行動・選択をする。
■企業や政府は、人間が「集まっている」という理由で個人の感情ではなく、組織としての目的を達成するための合理的行動・選択をする。
当然、感情だけで動く組織も合理的な行動しかしない組織も存在しないであろうから、上の2つの「どちらに近いか」「どちらの方が多いか」を考えてみる。

自分は、直感的に「感情」の方が多いと思う。地域・業種・組織体系・右派左派中道など様々な企業・政府があるから、一概には言えないし、そもそも企業にも官庁にも正式に属したことはないが、企業・政府の行動・選択は人々の意思決定であり、合理的要素よりも感情・哲学に左右されているはずである。そもそも、目的を達成するために合理的な決定をすることは何が合理的なのかを判断出来るかどうかという前提の時点で不可能に近いと思う。

1か月ほど前、三井住友FGと大和証券グループ本社が「大和証券SMBC」を巡り、提携を解消するというニュースがあったが、ここでも最終的な決定は両トップの哲学の違いだった。銀・証の連携か独立という金融業界の大きなテーマに関して、誰がいま(将来からみて)合理的な判断を下せるのだろうか。