10/14/2009

【書評】ウェブは資本主義を超える 「池田信夫ブログ」集成



著者の新刊「希望を捨てる勇気」を購入したので、少し前に購入していた本書を読んでおいた。Googleやクラウド・コンピューティング・Web2.0などの本を買い漁っていたときに購入したのだが、タイトルに惹かれずに読まないままで放置していた。こういう大それたタイトルの本は大抵、ネット礼賛で終わるだろうと思っていたので遠ざけていたのだ。
しかし、読み終わってみてもっと早くから読めばよかったと感じた。いわゆるリバタリアンの著者の主張は、バックグラウンドがないこともあり一貫していて明快だ。中でも秀逸なのは、情報通信産業では需要や技術革新が不確実であるため、有望な事業を損なうリスクを軽視してはならない、という点だ。製造業のような品質管理による不良品リスク低減よりも、様々な事業に分散投資することで将来大きく成長する芽を奪うリスクをなくすべきだと説く。

行動経済学でも実証されているように、人間は「手に入ったかもしれない利得」には極めて鈍感であり、目の前の損失を回避しようとする。しかし、「何が成功するかは分からない」という前提を自明とすれば、後は分散投資で損失回避性を堪えるだけである。